宅建士試験合格のコツ・権利関係 ~民法(各種の契約)~ | 全日本不動産協会 不動産保証協会 埼玉県本部

宅建業コラム

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宅建士試験合格のコツ・権利関係 ~民法(各種の契約)~


過去12年間の本試験において、使用貸借・贈与・請負・委任契約に関する問題がそれぞれ2問ずつ出題されています。これらの契約は、売買・賃貸借と比べると出題頻度は低いですが、受験対策上軽視することはできません。

各種の契約

1.使用貸借

使用貸借とは、無償で(賃料を払わずに)物を貸し借りする契約をいいます。

◆ポイント
1. 使用貸借は、口約束だけでは成立せず、物の引渡しがあってはじめて成立する。

2. 借主は、貸主の承諾なく、使用借権を譲渡したり、転貸することはできず、無断で譲渡・転貸したときは、契約を解除される。

3. 借主は、目的物の通常の必要費を負担しなければならない(貸主に費用の支払いを請求できない)。

4. 使用貸借は、借主の死亡により終了し、使用借権を相続することはできない。

2.贈与

贈与とは、人にただで物をあげる契約をいいます。

◆ポイント
書面によらず締結した贈与契約は、各当事者が解除することができる。ただし、履行が終了した後になって解除すると、相手に迷惑がかかるおそれがあるので、もはや解除できない。

3.請負

請負とは、請負人がある仕事を完成させることを約束し、注文者がこれに対して報酬を支払うことを約束する契約をいいます。

(1)完成した建物の所有権

建物ができあがった瞬間の所有権の帰属は、次のようになります。
1. 所有権の帰属について、特約があればそれによる。

2. 特約がないときは、材料の全部または主要部分を供給した側に、所有権が帰属する。ただし、請負人が材料を供給した場合でも、完成前に報酬を全額支払っているときは、注文者に所有権が帰属する。

(2)請負人の担保責任

引き渡された目的物が契約内容に適合しない場合、注文者は、損害賠償請求・契約の解除・追完請求・報酬の減額請求をすることができます。

担保責任を負わないとする特約は有効ですが、請負人が知っていながら注文者に告げなかった事実については責任を免れることはできません。

(3)その他

◆ポイント
1. 報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。

2. 仕事が完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約を解除できる。

4.委任

委任とは、当事者の一方が契約などの事務処理を相手方に頼み、相手方がこれを承諾することによって成立する契約をいいます。

◆ポイント
1. 委任は、原則として無償であり、特約がない限り報酬を請求することはできない。

2. 受任者は、報酬の有無に関わらず、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務(善管注意義務)を負う。

3. 受任者は原則として自ら事務処理をしなければならない。ただし、受任者が急病の場合などやむを得ない事情があるときは他人に委託することも許される。

4. 受任者は、委任者から請求があったとき、および委任事務が終了したときは、事務処理の状況または結果を報告しなければならない。

5. 事務処理に必要な費用につき、受任者の請求があれば、委任者は前払いをしなければならない。また、受任者が立て替えた費用は、支出の日以後の利息を付けて償還する必要がある。

6. 委任契約は、いつでも、いずれの当事者からでも、自由に解除できる。ただ、相手方に不利な時期に解除したときや、委任者が受任者の利益を目的とする委任を解除したことによって、相手方に損害が生じた場合は、原則として、その損害賠償をする必要はある。もっとも、受任者が病気になって事務処理を続けられなくなった場合のように、やむを得ず解除したときは、この損害賠償も必要ない。

7. 委任契約の解除の効果はさかのぼらず、将来に向かってのみ効力を有する。

論点の確認と知識定着のための問題

下記問題は○×問題です。

【Q1】

Aは、自己所有の建物について、災害により居住建物を失った友人Bと、適当な家屋が見つかるまでの一時的住居とする約定のもとに、使用貸借契約を締結した。Bは、Aの承諾がなければ、この建物の一部を、第三者に転貸して使用収益させることはできない。(H17 問10)

【Q2】

委託の受任者は、報酬を受けて受任する場合も、無報酬で受任する場合も、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負う。(H20 問7)

問題の解答と解説

【A1】○

使用貸借の借主は、貸主の承諾なく、使用借権を譲渡したり、目的物を転貸することはできません。

【A2】○

委任契約は、経済的な観点より当事者間の信頼関係を重視する契約なので、報酬の有無にかかわらず、受任者に善管注意義務を課しています。

植杉 伸介
宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を30年以上務める。著書に『マンガはじめて建物区分所有法 改訂版』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2021』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。

このコラムは、全日本不動産協会が発行する月刊不動産2022年8月号に掲載された特集記事を一部改定したものです。

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