宅建士試験合格のコツ・法令上の制限 ~建築基準法(高さ制限)~ | 全日本不動産協会 不動産保証協会 埼玉県本部

宅建業コラム

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宅建士試験合格のコツ・法令上の制限 ~建築基準法(高さ制限)~


本試験において、建築基準法の問題は、毎年2問ずつ出題されています。今回のテーマである高さ制限の出題頻度は3年に1回程度ですが、細かい知識に関する出題はほとんどありません。したがって、比較的短時間の学習で得点源にすることができるので、ぜひ、出題ポイントを押さえておきたいところです。

1.絶対的高さ制限

第1種・第2種低層住居専用地域および田園住居地域は、低層住宅が中心の区域なので、建物の高さを低くおさえる必要があります。そこで、第1種・第2種低層住居専用地域および田園住居地域内の建築物は、10mまたは12mのうち、当該地域の都市計画で定められた高さの限度を超えてはならないとされています。

高さの限度が10mと12mのどちらになるかは、地域の状況等に合わせて都市計画で決まることなので、
試験対策としては、とにかく「10mまたは12m」という数字を覚えるしかありません。

2.斜線制限

斜線制限とは、建築物の各部分の高さを、前面道路の反対側の境界線や隣地境界線からの水平距離に一定数値を乗じて得られた数値以下にしようとする規制です。ビルの上の方が斜めに切られたような形になっているものを見たことがあるでしょう。あれが斜線制限の結果です。

斜線制限には、道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限の3種類がありますが、それぞれの適用区域をしっかり覚えてください。高さについての具体的な数字を覚える必要はありません。

(1)道路斜線制限

道路の日照・採光・通風を確保するための規制であり、前面道路の反対側の境界線からの水平距離に
基づいて一定の計算をした数値によって建築物の高さが制限されます。

この道路斜線制限は、都市計画区域および準都市計画区域内のすべての区域に適用になります。

(2)隣地斜線制限

隣地の日照・採光・通風を確保するための規制であり、隣地境界線までの水平距離に基づいて一定の 計算をした数値によって建築物の高さが制限されます。

この隣地斜線制限は、第1種・第2種低層住居専用地域および田園住居地域以外の都市計画区域および準都市計画区域に適用されます。

(3)北側斜線制限

北側にある土地の日照・採光・通風を確保するための規制であり、前面道路の反対側の境界線または隣地境界線までの真北方向の水平距離に基づいて一定の計算をした数値によって建築物の高さが制限されます。

この北側斜線制限は、第1種・第2種低層住居専用地域、田園住居地域、第1種・第2種中高層住居専用地域のみに適用されます(ただし、中高層住居専用地域においては、日影規制が適用されているときは、北側斜線制限の適用はありません)。

3.日影規制

日影規制とは、建築物が隣地等に落とす日影の量を規制することにより、間接的に建築物の高さを制限して、隣地等の日照を確保するための規制です。

規制対象区域と規制対象建築物
次表の各区域のうち、地方公共団体が「条例」で指定する区域内の建築物について、日影規制が適用されます。


【注意】
1.用途地域の種類については、適用対象区域を覚えるより、適用されない区域を覚えるほうがいいでしょう。適用されない用途地域は、商業地域、工業地域、工業専用地域です。これ以外の用途地域はすべて対象区域に含まれます。
2.対象区域外の建築物でも、高さ10mを超える建築物で、冬至日において、対象区域内の土地に日影を生じさせるものは、日影規制が適用されます。
3.同一敷地内に2以上の建築物がある場合においては、これらの建築物を1つの建築物とみなして、日影規制が適用されます。たとえば、図のように準住居地域内の同一敷地内に高さ7mの建築物Aと高さ20mの建築物Bがあるとします。この建物をバラバラに見ると、Aは高さ10mを超えていないので規制されないし、Bは現実に隣地に日影を落としていないので規制されないはずです。しかし、このような場合、AとBは1つの建築物とみなすので、高さ10m超で、かつ、隣地に日影を落としていることになり規制を受けることになります。

論点の確認と知識定着のための過去問

下記問題は○×問題です。

【Q1】

第2種中高層住居専用地域内における建築物については、建築基準法第56条第1項第3号の規定による北側斜線制限は適用されない。(H18 問22)

【Q2】

商業地域内にある建築物については、建築基準法第56条の2第1項の規定による日影規制は、適用されない。ただし、冬至日において日影規制の対象区域内の土地に日影を生じさせる、高さ10mを超える建築物については、この限りでない。(H21 問19)

問題の解答と解説

【A1】×

北側斜線制限は、第1種・第2種低層住居専用地域、田園住居地域、第1種・第2種中高層住居専用地域に適用される。

【A2】○

日影規制の対象区域外にある建築物でも、高さ10m超で、冬至日に規制対象区域内の土地に一定時間日影を生じさせる場合には、日影規制が適用される。

植杉 伸介
宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を30年以上務める。著書に『マンガはじめて建物区分所有法 改訂版』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2021』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。

このコラムは、全日本不動産協会が発行する月刊不動産2022年1月号に掲載された特集記事を一部改定したものです。

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