宅建士試験合格のコツ・宅建業法 ~自ら売主制限~ | 全日本不動産協会 不動産保証協会 埼玉県本部

宅建業コラム

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宅建士試験合格のコツ・宅建業法 ~自ら売主制限~


今回は、8種類の自ら売主制限のうち、損害賠償額の予定等の制限、手付の額の制限等、担保責任の特約の制限という3つの論点を学習します。本試験においては、ほぼ毎年この3つの論点からの出題がありますので、必ずマスターしておきたいところです。

1. 損害賠償額の予定等の制限

契約当事者が債務不履行をした場合の損害賠償額を予め定めておくこと(損害賠償額の予定)は、本来自由であり、その額も自由に定めることができるのが原則です。しかし、宅建業者が自ら売主となる契約においては、買主の無知などにつけ込んで、不当に高額な賠償額を定めるというケースがあります。そこで、宅建業者が自ら売主となり宅建業者以外の者が買主となる場合は、損害賠償額の予定について下記の制限を加えました。

損害賠償額の予定等の制限

※損害賠償額の予定をしなかった場合は、実損害額を業者が証明すれば、10分の2を超える損害賠償を請求できる。また、売主側の賠償額を代金の10分の2超とする特約は、買主に有利な内容であるが、10分の2を超える部分が無効となることに注意。

2. 手付の額の制限等

手付には、解約手付の性質(契約の相手方が履行に着手するまでは、買主は支払った手付を放棄し、売主は手付の倍額を現実に提供することによって、契約を一方的に解除できるという性質)があります。しかし、せっかく締結した契約を解除されることを嫌う宅建業者は、特約によって解約手付の性質を排除したり、手付の額を高額にすることにより、事実上手付解除をできなくしようとすること(手付放棄による損失が大きすぎるので)があります。そこで、宅建業者が自ら売主となり宅建業者以外の者が買主となる場合は、手付について次のような制限を加えることにしました。

手付の額の制限

※上記に違反して代金の10分の2を超える手付が交付された場合、買主は、代金の10分の2の金額までの手付を放棄した上で契約を解除し、10分の2を超える部分は、返還するよう求めることができる。損害賠償額の予定等の制限と異なり、買主に不利な特約だけが無効となり、買主に有利な特約(たとえば「売主は手付の3倍の額を現実に提供しないと契約を解除できない」とする特約)は有効となることに注意。

3. 担保責任の特約の制限

宅建業者が自ら売主となり宅建業者以外の者が買主となる売買契約においては、原則として、種類・品質に関する契約不適合責任に関し、民法の規定より買主に不利な特約をしてはなりません。

担保責任の特約の制限

論点の確認と知識定着のための過去問

下記問題は○×問題です。

【Q1】

宅地建物取引業者Aが、自ら売主として、宅地建物取引業者でないBとの間で建物(代金2,400万円)の売買契約を締結する際、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額を480万円とし、かつ、違約金の額を240万円とする特約を定めた。この場合、当該特約は全体として無効となる。(H27 問36)

【Q2】

宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約(取引の相手方は宅地建物取引業者ではないものとする。)において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、取引の相手方が同意した場合に限り、当該責任の通知期間を当該宅地又は建物の引渡しの日から1年とする特約を有効に定めることができる。(R1 問27)

問題の解答と解説

【A1】×

代金の10分の2を超える部分のみが無効となるのであり、特約全体が無効となるわけではない。

【A2】×

通知期間について有効に定めることができるのは、引渡しの日から2年以上とする特約である。

植杉 伸介
宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を30年以上務める。著書に『マンガはじめて建物区分所有法 改訂版』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2021』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。

このコラムは、全日本不動産協会が発行する月刊不動産2021年9月号に掲載された特集記事を一部改定したものです。

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