宅建士試験合格のコツ・代理 権利関係2~民法2~ | 全日本不動産協会 不動産保証協会 埼玉県本部

宅建業コラム

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宅建士試験合格のコツ・代理 権利関係2~民法2~


今月は「代理」がテーマです。「代理」について、今回の民法改正で大きく変更された点はありませんが、宅建試験での出題頻度が高い項目なので、合格するためには必ずマスターしておきたいところです。法改正との関連で出題される可能性が高い論点を中心に学習ポイントを示していきます。

代理(代理人が本人になり代わって契約を結ぶこと)

(1)代理権の濫用

代理権の濫用とは、代理人が代理権の範囲内の行為をしたが、本人のためにする意図ではなく、自己または第三者の利益を図る目的であった場合をいいます。たとえば、本人から土地の売却を依頼された代理人が、売買代金を着服する意図で、依頼された土地の売買契約を締結したような場合です。

代理権が濫用された場合でも、代理権の範囲内の行為である以上、有効な代理行為となるのが原則ですが、代理人の目的を相手方が知り、または知ることができたとき(濫用目的について相手方が悪意または善意有過失であるとき)は、無権代理(代理権を有しない者による代理行為として無効)とみなされます。

※法改正前は判例により同様の結論が認められていたが、法改正により条文化された。

(2)自己契約・双方代理の禁止

自己契約(たとえば、売主Aから土地の売買代理権を与えられたBが自ら買主となり売買契約を締結)と双方代理(たとえば、売主、買主双方の代理人となって契約を締結)は、無権代理となります。ただし、債務の履行および本人があらかじめ許諾した行為は、無権代理とはなりません

これに加えて、代理人と本人との利益が相反する行為も、無権代理とみなされる(これも、本人があらかじめ許諾した行為は有効)旨の規定が法改正により新たに定められました。

(3)無権代理人の責任

無権代理行為について善意無過失(ただし、無権代理人が悪意のときは相手方に過失があってもよいとする規定が、法改正により定められた)の相手方は、無権代理行為を行った張本人である無権代理人に対し責任追及することができます。
無権代理人の責任

(4)表見代理

表見代理とは、無権代理であるにもかかわらず、正当の代理権があるように見える特別な事情があり、代理権の不存在につき相手方が善意無過失である場合に、有効な代理行為があったのと同じ効果を認める制度のことで、(1)代理権授与の表示による表見代理、(2)権限外の行為の表見代理、(3)代理権消滅後の表見代理の3種類があります。

法改正により、(1)の代理権授与の表示による表見代理と(2)の権限外の行為の表見代理をプラスしたパターン(賃貸の代理権を授与する表示で売買をしたような場合)や、(3)の代理権消滅後の表見代理と(2)の権限外の行為の表見代理をプラスしたパターン(賃貸の代理権が消滅した後に売買をしたような場合)の表見代理も認められることが条文に明記されました。

(5)復代理人を選任できる場合と代理人の責任

復代理人を選任できる場合と代理人の責任
ポイント:復代理人の行為に対する「任意」代理人の責任について、法改正前は選任・監督責任のみを負うのが原則とされていたが、法改正により上記表のとおりの責任を負うことになった。

論点の確認と知識定着のための過去問2問

下記問題は○×問題です。

【Q1】

Aが、所有する甲土地の売却に関する代理権をBに授与し、BがCとの間で、Aを売主、Cを買主とする甲土地の売買契約を締結した。Bが売買代金を着服する意図で本件契約を締結し、Cが本件契約の締結時点でこのことを知っていた場合であっても、本件契約の効果はAに帰属する。(H30年 問2)

【Q2】

委任による代理人は、本人の許諾を得たときのほか、やむを得ない事由があるときにも、復代理人を選任することができる。(H29年 問1)

過去問の解答と解説

【A1】×

代理人が自己または第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合、相手方が代理人の意図を知り、または知ることができたときは、その行為は無権代理行為とみなされ、代理行為の効果は本人に帰属しない。

【A2】〇

任意代理の場合、復代理人を選任することができるのは、本人の許諾を得たとき、または、やむを得ない事由があるときである。

  
植杉 伸介

早稲田大学法学部卒業。宅建士、行政書士、マンション管理士・管理業務主任者試験等の講師として30年以上の実績がある。『マンガはじめて建物区分所有法 改訂版』(住宅新報出版)など、これまでに多くのテキストや問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。

このコラムは、全日本不動産協会が発行する月刊不動産2020年7月号に掲載された特集記事を一部改定したものです。

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