宅建士試験合格のコツ・土地取引の届出・許可等の規制 法令上の制限4~国土利用計画法と農地法~ | 全日本不動産協会 不動産保証協会 埼玉県本部

宅建業コラム

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宅建士試験合格のコツ・土地取引の届出・許可等の規制 法令上の制限4~国土利用計画法と農地法~


例年、本試験では国土利用計画法と農地法からそれぞれ1問ずつ出題があります。いずれも土地の取引等に対する規制が問題になりますが、規制される取引等の種類には違いがあります。その違いを正確に押さえるためには、両者を比較しながら学習するとよいと思います。

国土利用計画法(国土法)

(1)土地取引の届出

全国にわたり、一定規模以上の土地について土地売買等の契約をした場合には、権利取得者が単独で、契約締結後2週間以内に、都道府県知事に対し、一定の事項を届け出なければなりません(事後届出)。

(2)届出が必要な土地取引(土地売買等の契約)とは

下記の図にある(1)権利性、(2)対価性、(3)契約性の3つの要件をすべて満たすものは届出が必要となります。反対にどれかが欠けるものは届出不要です。
届出が必要な土地取引

※地上権または賃借権を設定する場合の対価性とは、賃料または地代の支払いではなく、権利金(権利設定の対価として支払われる金銭で、返還されないもの)の支払いを意味する。

農地法

(1)農地法3条・5条の許可

農地を農地のままで利用する目的、または採草放牧地を採草放牧地または農地として利用する目的で、売買等の権利移動をする場合は、原則として農業委員会の許可を受けなければなりません(農地法3条)。
農地または採草放牧地を宅地等に転用する目的で、売買等の権利移動をする場合は、原則として都道府県知事の許可を受けなければなりません(農地法5条)。

(2)許可が必要な「権利移動」とは

権利移動とは、使用収益権の変動をもたらすものをいうため、抵当権の設定は規制の対象に含まれません(権利移動に該当しない)。

規制される取引等の違い

規制される取引の違い
両者の違いについては、それぞれの規制目的を理解することがポイントです。国土法は、地価高騰の防止を主な目的として作られた法律なので、土地に値段をつける行為を規制します。これに対し農地法は、農業生産力の増進を主な目的として作られた法律なので、農地等を使用収益する権利が変動して農業生産力に変化が生じる行為を規制します。

例えば、売買予約をした場合、その段階で代金が設定されるので国土法は○(規制の対象)ですが、予約の段階ではまだ農業生産力に変化は生じないので農地法は×(規制の対象外)です。同様に予約完結権の行使については、ここで本契約に移行し使用収益権が変動するので農地法は○ですが、この段階で代金が設定されるわけではないから国土法は×となります。

論点の確認と知識定着のための過去問2問

下記問題は○×問題です。

【Q1】

Fが市街化区域内に所有する2,500㎡の土地について、Gが銀行から購入資金を借り入れることができることを停止条件とした売買契約を、FとGとの間で締結した場合、Gが銀行から購入資金を借り入れることができることに確定した日から起算して2週間以内に、Gは国土利用計画法第23条の届出を行わなければならない。(H24年 問15)

【Q2】

農業者が住宅の改築に必要な資金を銀行から借りるために、自己所有の農地に抵当権を設定する場合には、農地法第3条第1項の許可を受ける必要はない。(H26年 問21)

過去問の解答と解説

【A1】×

売買契約を締結する時点で代金が設定されるので、購入資金の借入れ確定日からではなく、「契約締結日」から2週間以内に届出をしなければならない。

【A2】○

抵当権を設定しても農地の使用収益権は変動しないので、農地法の許可は不要である。

 

植杉 伸介

早稲田大学法学部卒業。宅建士、行政書士、マンション管理士・管理業務主任者試験等の講師として30年以上の実績がある。『マンガはじめて建物区分所有法 改訂版』(住宅新報出版)など、これまでに多くのテキストや問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。

このコラムは、全日本不動産協会が発行する月刊不動産2020年3月号に掲載された特集記事を一部改定したものです。

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