キャッシュレス決済の特徴と普及状況・不動産業界におけるメリット・デメリット | 全日本不動産協会 不動産保証協会 埼玉県本部

宅建業コラム

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キャッシュレス決済の特徴と普及状況・不動産業界におけるメリット・デメリット


昨年末のスマートフォン決済サービス「PayPay」が実施した大型還元キャンペーンで、一気に広がりを見せ始めたキャッシュレス決済。クレジットカードや交通系カードで既に始めている人も多いですが、不動産業界ではどのように普及していくのでしょうか?

現金決済との違いやメリット・デメリットを含めて紹介します。

キャッシュレス決済

キャッシュレス決済とは?

「キャッシュレス決済」は、主に3種類あります。

キャッシュレス決済の種類

一番なじみがあるのは「クレジットカード決済」で、店舗やネット通販など使える場所も多くかなり普及しています。

「電子マネー決済」は、交通系カード(Suica、PASMOなど)や流通系カード(WAON、nanacoなど)、銀行口座と紐付けて同時引き落としを行うデビットカード、「おサイフケータイ」など。タッチ式で支払いが早く、自動販売機やコンビニエンスストア、タクシーなど使える場所も拡大。小銭を使うような日常的な場面で利用されています。

LINE PayやPayPayなど、話題となっている「スマホ決済」は、バーコードやQRコード(二次元コード)をスマホに内蔵されているカメラで読み取って決済する方法で、スマホにアプリをダウンロードして使います。

QRコードを読み取って、「PayPay」アプリをダウンロード。 銀行口座等からチャージして支払いができる

QRコードを読み取って、「PayPay」アプリをダウンロード。銀行口座等からチャージして支払いができる

 

特典キャンペーンやポイント還元率が高いということもあり、若い世代を中心に利用者が急増していますが、使える店舗はコンビニや飲食店など、まだまだ少ない状況です。

キャッシュレス決済のメリットは、支払い作業が簡単かつスピーディーであること。さらに電子マネーやコード型決済(※QRコードやバーコードを用いた決済)では、クレジットカードと組み合わせればポイント還元が上乗せされることも、消費者にとって魅力の1つです。不正アクセスが発覚した「7Pay(セブンペイ)」の件で安全性が不安視されていますが、普及促進の動きは今後加速していくと見込まれています。

 

政府も普及を後押し

経済産業省が2018年4月にまとめた「キャッシュレス・ビジョン」によると、国内におけるキャッシュレス決済比率は20%程度と、導入先進国(40~60%台)と比べると普及率は高くありません。

同ビジョンでは、2025年の大阪・関西万博に向けて、キャッシュレス決済比率40%の目標を前倒し(「未来投資戦略2017」では目標年を2027年に設定)し、将来は世界最高水準の80%を目指すとしています。

政府も今年10月の消費税引上げに伴い、キャッシュレス決済を行った消費者に対してポイント還元(2%以上)することを表明するなど、国を挙げてキャッシュレス化に動き出しました。

仲介業者でも導入始まる

今のところ、スマホ決済が可能な店舗はコンビニや飲食店が中心ですが、ユーザー拡大に伴い利用シーンも広がりつつあり、その波は不動産業界にも及んでいます。

東京都内で賃貸・売買仲介業を展開している株式会社リアバリューでは、昨年11月から賃貸仲介手数料の決済方法としてスマホ決済を導入しました。その前からクレジットカード決済を導入していましたが、PayPayやLINEPayのサービスを知り、代表取締役の久米宏和氏は「他社との差別化になるのでは」と検討を開始。

株式会社リアバリュー代表取締役の久米宏和氏

株式会社リアバリュー代表取締役の久米宏和氏

「ちょうどPayPayで決済手数料無料キャンペーンが始まったことに加え、クレジットカードと連携できることもわかったので、決済会社側に相談ベースで対応してもらい導入を決めた」とのこと。同時にLINE Pay、クレジットカードと紐付けられるAmazon Payも導入し、決済方法の選択肢を拡大しました。

これまでの利用実績はAmazonPayが5件、PayPayが8件で、利用者層も20~30歳代とスマホユーザー世代。キャンペーンに加え、各メディアで話題になったことでスマホ決済の認識が広がっていること、また振込み手数料がかからないこともあり「お客様の利便性の向上と金銭面でのメリットにつながると感じました」と話します。

また事業者側のメリットとして、翌月振込みのクレジットカード決済に対し、一部のスマホ決済は最短で翌日振込みという点を挙げます。「現状はPayPayが翌日反映ですが、タイムラグがなければ持ち出しがなく、資金面で安定します」。

手数料負担やシステム面で課題も

一方で、利用者比率は取引全体の10~15%程度。「途中から決済金額の上限設定の減少やサービスの変更もありPayPayの利用が減り始めた」と、サービスの不安定さが影響したといいます。

さらに今後、決済手数料の負担が発生することも懸念材料の1つ。「現在はキャンペーン中で当社側の負担はゼロですが、今後どの程度の手数料がかかるかによって、サービスの継続が可能かどうか見極める必要はあります。1%ぐらいなら何とか対応できるが、3~4%となると難しい」とも話します。

また、システム面については改善の余地があるとも。銀行振込みでは入金者名が表示されますが、QRコード決済では利用者番号・日時・金額表示だけなので、入金者との照合が必要になります。

「今は件数が少ないのでいいですが、利用者が増えていくと手間がかかることになる」と指摘します。取扱い金額の上限拡大やシステム面での改善など、まだまだ課題は多いですが、今後不動産業界との親和性が図られれば、顧客メリットの高いサービスとして普及していきそうです。

 

このコラムは、全日本不動産協会が発行する月刊不動産2019年10月号に掲載された特集記事を一部改定したものです。

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