2019年の不動産市況(売買編)~首都圏と地方圏の住宅市場の展望~ | 全日本不動産協会 不動産保証協会 埼玉県本部

宅建業コラム

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2019年の不動産市況(売買編)~首都圏と地方圏の住宅市場の展望~


近年の住宅市場においては、低金利や減税などの優遇制度が市場の下支えになり、2018年は全国的に売れ行きが鈍化しているものの、大幅な下落がなく、堅調に推移していることが大きな特徴ともいえます。首都圏と地方圏それぞれの住宅市場を振り返るとともに、地域の特徴にも触れながら、2019年の展望についてまとめます。(一般財団法人 日本不動産研究所 曹 雲珍)

首都圏、地方圏ともに中古マンションの需要が高まっています

首都圏の住宅市場について

首都圏のマンション市場においては、2014年から新築の販売戸数が減少傾向を示しています。一方、中古の成約戸数は概ね増加傾向が続いており、2016年は初めて中古の成約戸数( 37,189戸)が 新築(35,772戸)を上回りました。2018年においても、中古が新築を上回る状況が続いています(図表1)。

図表1 首都圏分譲マンションの販売戸数と中古マンションの成約戸数の推移

首都圏の新築分譲マンションの年間販売戸数は2016年から4万戸を下回っています。一方、中古マンションの新規登録戸数は、2016年は194,336戸、2017年は193,988戸、2018年は206,901戸で過去最高水準となり、新築マンションの供給量より圧倒的に多く、消費者にとって選択肢が拡大しました。また、首都圏の新築マンションの平均価格は2015年6月から5千万円台を維持して高止まり傾向にあるため、中古マンションの「割安感」が強まっています。したがって、近年では中古マンションが新築に代わって一般消費者(実需層)の受け皿となっています。また、これは首都圏だけではなく、地方圏でもみられる傾向であり、今後も続くものと思われます。

首都圏の戸建住宅市場においても、近年は全体的に堅調に推移しています。2018年は、新築と中古の成約件数は前年比がほぼ横ばいで推移し、価格はやや上昇しました。

新築マンション価格の上昇により、2012年以降から建売住宅の平均価格との価格差が拡大しており、2017年の価格差は1,075万円となりました(図表2)。

図表2 首都圏の新築マンションと建売住宅市場の動向

市場関係者へのヒアリングによると、このような価格差の拡大につれ、建売住宅の割安感が増してきており、新築マンションから建売住宅に流れている購入者が増えているということです。また、中古戸建住宅の成約価格は概ね下落傾向が続いているのに対して、中古マンションの成約価格は概ね上昇傾向が続いており、中古戸建住宅と中古マンションの年間平均成約価格の差が縮小し、2016年はついに逆転しました。このような価格差の拡大により新築マンションから建売住宅へ、価格差の縮小により中古マンションから中古戸建住宅へ購入対象を変更するケースが少ないながらも確実に増えています。そのことが戸建住宅市場が堅調に推移している1つの要因になったと考えられます。2019年も、同様の要因により、戸建住宅市場が堅調に推移するものと思われます。

地方圏のマンション市場について

北海道地方では、札幌市の新築マンション価格は2011年から上昇が続いていますが、2018年の売れ行きが鈍化したため、直近の価格動向をみると、やや下落傾向を示している地域もあります。ただし、住宅用地の確保はますます難しくなっており、2019年も大きな価格の崩れはないものと予想されています。また、新築マンション価格の上昇につれ、中古マンションの需要も高まっており、長期的にみると価格上昇傾向が続いていますが、エリアの価格差と物件の価格差はさらに拡大するでしょう。

東北地方では、仙台市で震災後に建築資材の高騰などにより、新築マンション価格は大幅に上昇しました。その後も概ね上昇傾向が続いており、2018年に入ってから完全在庫は増加傾向にありましたが、開発業者が大幅な値下げを避けるためペースを遅らせて販売す
る姿勢は、2019年も継続するでしょう。中古マンション価格も新築市場の影響を受け、概ね上昇しています。特に築年数10年程度の優良物件が、購入時より高く取引される傾向はこれからも続く見通しです。

九州地方では、福岡市の新築マンション価格は2018年に入っても依然として高値で推移しています。高額マンションについては福岡県外からの投資目的による購入がみられるものの、売れ残りも散見されています。ただし、2018年末から競争力の高いマンションがほぼ同時期に販売開始となったため、2019年には大幅な下落がなくても、今までの好調な売れ行きが継続するのか、十分に注視していく必要があります。

住宅市場における2019年の展望

今後、低金利が続く中、住宅需要が堅調に推移すると見込まれます。2019年10月の消費税増税による増税前の駆け込み需要は限定的とみられています。

マンション市場は、地域によって価格調整がみられますが、交通利便性などの立地条件が良い物件は相変わらずよく売れると予想されます。完全在庫戸数が増加する地域は販売ペースを調整して大幅な値下げを避けているため、大きな価格の崩れはないものと予想されます。また、立地や予算を限定して物件を探した場合、中古マンションの競争率は依然として高いため、中古マンション価格も大幅に下落する可能性は極めて低いでしょう。戸建住宅市場は、マンションとの価格差が縮小していることや、新築マンションと建売住宅の価格差が拡大していることが、戸建住宅市場が堅調に推移している1つの要因となっており、この状況は2019年も続くものと思われます。

一般財団法人 日本不動産研究所 研究部兼 国際部 主任研究員
曹 雲珍(そう うんちん)

中国内陸、香港、韓国などアジア不動産流通市場の研究調査、アジア地域不動産国際交流会議と共同研究のコーディネートおよび日本の住宅マーケットインデックス調査業務を担当。不動産学博士、明海大学不動産学部非常勤講師。

このコラムは、全日本不動産協会が発行する月刊不動産2019年3月号に掲載された特集記事を一部改定したものです。

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