宅建士試験合格のコツ・法令上の制限 ~建築等の規制(都市計画法)~ | 全日本不動産協会 不動産保証協会 埼玉県本部

宅建業コラム

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宅建士試験合格のコツ・法令上の制限 ~建築等の規制(都市計画法)~


今回は、都市計画法による建築等の規制について学習します。それらの規制のうち、開発区域における建築制限は、少しまぎらわしい側面がありますが、あまり難しく考えず、なぜ制限されるのかということを単純化して理解すれば、頭の中が整理され、規制の中身をスムーズにマスターすることができると思います。

1. 開発区域内での建築制限

開発区域とは、開発許可を受けた区域のことです。開発区域内の建築制限については、工事完了の公告の前後で分けて考える必要があります。工事完了の公告とは、開発行為としての工事、つまり土地の造成工事等が完了した時に行われるものです。
工事完了の公告

(1)工事完了公告前の制限

工事完了公告前の開発区域内では、原則として、建築物の建築および特定工作物の建設が禁止されています。しかし、次の3つの場合は、例外的に建築等が許されます。

(1)工事用仮設建築物の建築
(2)都道府県知事が支障がないと認めた場合
(3)開発行為に不同意の者が行う場合

ここでは、なぜ建築が制限されているかを理解することが重要です。工事完了公告前の開発区域内は、開発行為としての造成工事等が行われている最中の土地ということになります。土地の造成工事を行っている場所なのに、建築物等が建築されたのでは工事のじゃまになりますね。そのような理由で建築を規制しているのです。

このような理解があれば、例外も覚えやすいでしょう。工事用仮設建築物は、造成工事のために設置した建築物なので、工事のじゃまになることはないはずです。また、知事が支障がないと認めた場合は、工事のじゃまにならないと認めたということですから、建築が許されます。開発行為に不同意の者が行う場合だけは、工事のじゃまになるのですが、これは開発許可を受けたからといって、開発に不同意の者にまで強制することはできないので、仕方ないことです。

そして、ここで規制される行為は、建築物と特定工作物の建築等だけで、開発区域内の土地を分譲することは規制されません。土地の分譲が行われても、観念的に所有権が移転するだけで、工事の物理的な妨げになることはないからです。

(2)工事完了公告後の規制

開発行為とは、建築物の建築または特定工作物の建設のために行う土地の区画形質の変更をいいます。したがって、工事完了公告後に建築物等を建築するのは、当然のことです。しかし、開発行為後に建築することが予定されていたもの以外の建築物等を建築することは許されません。都道府県知事は、特定の建築物等を予定して開発許可を与えています。それなのに、予定外の建築物を建築したのでは、「オイオイ話が違うぞ」ということになるからです。

ただ、これにも次の2つの例外があります。

(1)都道府県知事が許可した場合
(2)用途地域が定められている場合

この2つ目の例外は大きな意味を持ちます。市街化区域には必ず用途地域が定められます。したがって、開発区域が市街化区域の場合は、常に(2)の例外に該当することになるからです。

2. 市街化調整区域内での建築等の制限

市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域なので、あまり建物を建ててもらっては困ります。たとえば、市街化調整区域内の山林を造成して住宅を建築するのであれば、建物建築のための山林の造成という開発行為を伴います。したがって、開発許可の手続きの段階で、市街化調整区域にふさわしくない建築を規制することができます。

しかし、建物を建築する場合に、必ず開発行為が行われるとは限りません。土地の区画形質の変更をしなくても建物を建築できる状態の土地であれば、開発行為をせずにいきなり建物を建築することがあります。このような場合は、建築行為そのものを規制するしかありません。

そこで、市街化調整区域内の開発区域以外の区域で建物を建築する場合は、原則として、都道府県知事の許可が必要とされています。

しかし、都道府県知事の許可がなくても建築できる例外もあります。この例外を押さえるのは簡単です。次のとおり、開発許可が不要な場合の例外とほとんど同じだからです。

<市街化調整区域内の開発区域以外の区域で建物を建築する場合でも、許可不要となる例外>
(1)農林漁業用の建築物
(2)図書館、公民館等の公益上必要な建築物のうち一定のもの
(3)都市計画事業等の施行として行われる場合
(4)非常災害のための応急措置
(5)仮設建築物

なお、上記の規制は、開発区域以外の区域にのみ適用されることに注意してください。開発区域においては、開発許可をする段階で、市街化調整区域にふさわしくない行為は排除されるからです。

論点の確認と知識定着のための過去問

下記問題は○×問題です。

【Q1】

開発許可を受けた開発区域内の土地においては、開発行為に関する工事完了の公告があるまでの間であっても、都道府県知事の承認を受けて、工事用の仮設建築物を建築することができる。(H18問20)

【Q2】

用途地域等の定めがない土地のうち開発許可を受けた開発区域内においては、開発行為に関する工事完了の公告があった後は、都道府県知事の許可を受けなければ、当該開発許可にかかる予定建築物以外の建築物を新築することができない。(H30 問17)

問題の解答と解説

【A1】×

工事完了公告前の開発区域内の土地において、工事用の仮設建築物は、都道府県知事の承認がなくても建築することができる。

【A2】○

工事完了公告後の開発区域内の土地については、用途地域の定めがない場合、都道府県知事の許可がないと、予定建築物以外の建築物を建築することはできない。

植杉 伸介
宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を30年以上務める。著書に『マンガはじめて建物区分所有法 改訂版』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2021』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。

このコラムは、全日本不動産協会が発行する月刊不動産2021年11月号に掲載された特集記事を一部改定したものです。

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