電子契約のメリット・デメリット-10月から電子書面交付の社会実験スタート | 全日本不動産協会 不動産保証協会 埼玉県本部

宅建業コラム

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電子契約のメリット・デメリット-10月から電子書面交付の社会実験スタート


賃貸取引において2017年10月から本格運用が開始された「IT 重説」に続き、不動産取引の電子化に向けた動きが始まりました。
今年10月から、賃貸取引における「電子書面交付」の社会実験がスタート。
3カ月間の実験結果を受け、本格運用について検討することになっています。
電子契約には、どんなメリット・デメリットがあるの でしょうか?

賃貸取引についての 社会実験スタート

電子契約

今回、社会実験を行うのは、

  1. 個人 を含む売買取引におけるITを活用した 重要事項説明(IT重説)
  2. 賃貸取引 における重要事項説明書等の電磁的 方法による交付(電子書面交付)

の2つ。いずれも10月1日から開始し、1.は 1年間、2.は3カ月を予定しています。

1.については、法人間売買取引のIT重 説の社会実験が継続中ですが、賃貸取 引においてトラブルなく安全な取引が 行われていることから、個人を含む売買取引についても検討を行うことになりま した。

2.については、本格運用した賃貸取引におけるIT重説で大きなトラブル がない上、インターネットを使用したワンストップ取引に対するニーズが高いことを受けての実施となります。

不動産取引における電子化については、2013年12月に決定された「IT利活用の裾野拡大のための規制制度改革集中アクションプラン」に基づき、不動産取引における重要事項説明の際の対面以外の方法について、国土交通省の「ITを活用した重要事項説明等のあ り方に係る検討会」で検討を開始。
賃貸取引におけるIT重説の本格運用後に、宅建業法35条、37条に規定する 「重要事項説明書等」の電磁的交付についても検討が行われ、今回の社会実験の実施が決まりました(図表1)。

図表1 社会実験の実施フロー

メール送付かダウンロードで交付

社会実験への参加は、宅建業者としての要件を満たしIT環境が整備されていれば、基本的に制限されません。
また電子書面交付サービスを手掛ける事業者についても、改ざん防止措置がある電子署名サービスが提供できる等の要件が満たされていれば、登録事業者側が選べるようになっています。

7月に公表された社会実験についてのガイドラインでは、IT重説と同じ条件(IT環境の確認、宅地建物取引士証の提示、相手方の本人確認、IT重説中の録画・録音など)の上で、図表1の流れで行うことを示しています。

宅建業法では取引士ごとの記名押印が求められますが、社会実験では登録事業者の代表者が取得するIDを、代理者として利用する(要登録)ことも可能です。
また電子書面交付は、メールに添付するか、サーバーから借主側がダウンロード(図表2)するか、どちらでも可能になっています。

サーバーからダウンロードの交付による方法

電子化で「商機が生まれる」

電子書面交付は、電子契約の一部分です。では電子契約化が進むとどういったメリットがあるのでしょうか?

電子契約サービス「クラウドサイン」を展開する弁護士ドットコム株式会社の場合、不動産会社での導入の理由の大半は「業務効率化やコンプライアンス強化」で、賃貸契約の更新・退去契約で活用されています。

大手事業者の導入に加え、ここ半年ぐらいで地方からの引き合いも増えてきているとのこと。
遠方への転勤・進学のために家を探す人にとっては、何度も来店する時間・費用が抑えられるというメリットに加え、ワンストッ プ取引で利便性も向上。不動産業者にとっても商機につながるといいます。

また「IMAoS(イマオス)」を展開する SB C&S(旧ソフトバンクC&S)株式会社も、ワンストップ取引ができるようになれば、「今までよりも早く契約が確定し、キャンセル防止にもなる」としていま す。
この半年ぐらいで電子契約への関心度合いが高まっていて、「管理会社では導入段階に移り、仲介会社も本格的に情報収集をしている」状況だといいます。

一方、電子化のデメリットとしては、不動産会社・消費者相互のインターネット環境の整備やセキュリティ面が挙げられますが、最近では携帯電話番号によるSMS(ショートメッセージサービス)でのサービスが増えたことで、スマートフォ ンで簡単にやり取りができる上、複数要素での認証となるため、より強度なセキュリティ環境が整っているといえます。

本格運用に向けたスケジュールについては、「宅建業法の改正が伴うため、 社会実験終了後すぐの運用とはいかないが、運用方法に問題がないかをしっかり検証した上で実施していく」(国土 交通省土地・建設産業局不動産業課不動産業指導室の石原寛之課長補 佐)とのこと。

また、電子書面交付はあくまでも「書面交付」の1つの手段。「社会実験をきっかけに、消費者側の選択肢の幅を広げるとともに、事業者側の商機にもつなげてほしい」としています。

このコラムは、全日本不動産協会が発行する月刊不動産2019年9月号に掲載された特集記事を一部改定したものです。

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