相続登記が義務化!過料の対象となるケースは? | 全日本不動産協会 不動産保証協会 埼玉県本部

宅建業コラム

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相続登記が義務化!過料の対象となるケースは?


相続登記の義務化
亡くなった家族(被相続人)が不動産を所有していた場合、遺された家族(相続人)がその不動産を相続する際には名義変更が必要となります。この手続きを「相続登記」といいます。

令和6年(2024年)4月1日から相続登記の義務化が始まりました。

従来は不動産を相続しても、名義変更の必要性がなければ、「そのまま放置」しているケースが少なくありませんでした。

今後は相続登記の義務化により、違反した場合は最低10万以下の過料の対象となるので注意が必要です。

本記事では、このたび施行された相続登記の義務化について、おさえておきたいポイントをわかりやすく解説します。ぜひ、最後までご覧ください。

相続登記とは

相続登記とは、被相続人が所有していた不動産の名義を、相続人の名義に変更する一連の手続きをいいます。所轄の法務局で相続登記を行うことで、不動産の所有者が誰なのか、法的に記録、管理されます。

例えば、埼玉県さいたま市に不動産を所有していた父親が亡くなり、東京在住の長男が相続した場合の相続登記は次の通りです。
相続登記の例

相続登記はなぜ必要?義務化となった理由

相続登記はなぜ必要?義務化となった理由
今回、なぜ相続登記が義務化されたのでしょうか。その最も大きな理由の一つとして、喫緊の課題である「所有者不明土地」の存在が挙げられます。

所有者不明土地とは
・登記簿を調べても所有者がすぐに判明しない
・判明しても、所有者と連絡がつかない
などの土地をいいます。

所有者不明土地は、国内の人口減少に伴い、急激に増加しているのが現状です。
国土交通省の調査によると、2016年時点で所有者不明土地の総面積は、九州全土を上回る規模であり、このままいくと2040年には北海道本島にせまる約720万ヘクタールに達するともいわれています。

所有者不明土地が増えることで、以下のような悪影響の恐れがあります。

  • 公共事業や復旧・復興事業をすすめる上での妨げになる
  • 空き地のまま長く放置すると、敷地内の雑草の繁茂、ゴミの不法投棄が増える
  • 不法占拠者が住みついた場合、周辺の治安や公衆衛生に影響が出る
  • 所有者が不明だと不動産取引(売買)ができない

所有者不明土地が増加する、もっとも大きな要因の一つが相続登記の未了によるものです。不動産が相続されても、正しく相続登記がされないと、登記簿上の所有者が亡くなった人のままの状態になります。その状態が長く続くと、さらにその後の相続が発生し、相続人がネズミ算式に増えてしまいます。その結果、相続人と音信不通になったり、行方不明になることで、所有者不明土地が発生するのです。

以上の背景から、所有者不明土地の発生を抑止するべく、今回の法律で相続登記が義務化されました。

相続登記を行わないとどうなる?

相続登記を行わないとどうなる?
従来まで、相続登記するかどうかは「当事者の任意」に任せられていました。その結果、所有者不明土地が増えたのは上述の通りです。こうした問題を解消するべく、今後は相続登記が義務化されます。

では、不動産を相続したにもかかわらず、相続登記の義務を怠るとどうなるのでしょうか。以下、相続登記を行わない場合のデメリット、リスクについて説明します。

10万円以下の過料の対象となる

本法律の施行後は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ不動産を相続したことを知ったときから3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。正当な理由なく期限内に相続登記を行わない場合には、10万以下の過料が科されることになります。

不動産を相続したことを知ったときとは、不動産所有者としての相続開始日でなく、「不動産の所有権を相続することを知った(認識した)日」である点に注意してください。

また、相続登記を申請しなくてもよい「正当な理由」については、法務省の通達(令和5年9月12日法務省民二第927号)にて下記のように例示されています。

  • 相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要する場合ケース
  • 遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているため、誰が不動産を相続するのか明らかにならない場合
  • 相続登記申請義務を負う者自身に重病等の事情があるケース
  • 相続登記申請義務を負う者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律に規定する被害者等であり、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
  • 相続登記申請義務を負う者が経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合

上記の例示以外でも、法務局では相続登記申請義務者の個々の事情を勘案し、総合的に判断するとされています。

相続を重ねているうちに権利関係が複雑化する

不動産を相続したにもかかわらず、相続登記せずに長期間にわたり放置したままにすると、相続人の数が増え、権利関係が複雑になる恐れがあります。

例えば、最初の所有者である父親が亡くなった場合、3人の息子だった場合を考えてみましょう。この時点で相続登記しないまま、3人の息子が亡くなり、さらに代襲相続でその息子の子の代まで相続を重ねると、相続人の数は世代がすすむほど増え続けることになります。

相続登記は相続人全員の合意が必要です。このように相続人が増え続ければ、それだけ相続登記が難しくなるのです。

不動産の売却ができなくなる

不動産を売却するには、実際の所有者と登記簿上の所有者との一致が前提です。相続登記を行わないと、登記簿上の所有者は亡くなった家族のまま。相続した不動産を売却したいのに売却できなくなります。

相続登記の対象となる不動産

相続登記の対象となる不動産
次に相続登記の義務化の対象となる不動産について解説します。

過去に相続して登記していない不動産

注意したいのは、相続登記の義務化の適用対象は、義務化の施行日「以前」に相続した不動産にも遡及して適用される点です。
起算日は
・施行日(R6年4月1日)
・不動産を相続したことを知ったとき
いずれか遅い日となり、その起算日から3年以内に相続登記の申請が必要となります。

この場合も、正当な理由なく期限内に申請を怠ると、10万以下の過料が科せられます。

遺贈も義務化の対象?

相続が発生すると同じように発生する「遺贈」された不動産は、登記の義務化の対象となるのでしょうか。遺贈は法定相続人に対して行われる場合と、法定相続人以外の第三者に対して行われることもあります。

今回の相続登記義務化の対象は、前者である相続人への遺贈にのみ適用される点、注意してください。

【まとめ】毎年のように行われる、相続登記に関連する法改正

所有者不明土地の増加に端を発し、R6年4月1日より相続登記の義務化の法律が施行されました。所有者不明土地の予防、および解消に向けて、国としてもその対策に本腰を入れています。

相続登記の義務化のほかにも、相続登記に関する新しい制度が創設され、法の改正も進んでいます。相続登記の義務化により、所有者不明土地の問題が解消できるか、今後の動向に注目したいところです。

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