宅建業コラム

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今年の家賃はどうなる?2019年の不動産市況(賃貸編)

更新日:2019年05月24日

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた開発や、首都圏の再開発事業などで、不動産市場全体は活況が続いている状況において、賃貸住宅市場はどういった市場環境になっていくのでしょうか?
2019年の賃貸市場の展望と取り組むべきポイントについて、(株)リクルート住まいカンパニー・SUUMO編集長の池本洋一氏にお話を伺いました。

首都圏・地方主要都市圏ともに二極化が顕著

首都圏・地方主要都市圏は微増、郊外・地方圏は横ばいから微減傾向で推移すると見込まれます

2019年の賃料動向は、「首都圏・地方主要都市圏ともに二極化が進む」と話す池本氏。首都圏では、賃料が都市部の分譲価格に追随する傾向にあるため、分譲価格が微増で推移している現状から、賃貸価格が下落するとは考えにくいと指摘。一方、郊外では人口の増加要因がないため、供給が需要を上回る状況が続いており、価格面での上昇は厳しいと見込まれています。

この傾向は首都圏だけでなく、札幌や仙台、中京圏、関西圏、広島、福岡などでも同様で、その要因は、JR新幹線停車駅の駅前再開発事業が進み、駅周辺エリアに人口が集まってきているということ。

「例えば名古屋では、これまでの中心地は栄だったが、再開発によって名古屋駅前に人口が集中し始めており、また札幌では地下鉄始発駅に人気が集まるなど、職住近接の傾向が目立ってきた。それに伴い賃料動向も、東京のような動き方をするようになっている」と池本氏は指摘します。そのため物件の選定においても面積よりも立地が重視され、この傾向は今年も継続する見通しです。

また、「SUUMO」に掲載されている物件で、反響があった間取りタイプ別の賃料推移では、東京23区でファミリータイプの上昇幅が高くなっています(図表1)。

図表1「東京23区」における間取りタイプ別賃料の推移

これは、インバウンドや東京オリンピック開催による用地の競合で新築分譲マンション価格の上昇による追随と考えられます。大阪市を除くその他大阪府では、1・2・3LDKともに微減傾向にあり、今後は横ばいから下落が予想されます(図表2)。

図表2「大阪市以外の大阪府」における間取りタイプ別賃料の推移

マンションは堅調、アパートは苦戦

物件別の賃料傾向としては、マンションは堅調に推移する見込みですが、アパートは厳しい状況が続くと予想されます。首都圏(2018年9月度)のマンション平均坪賃料は対前年比0.3%増で、九州(同年10月度、0.8%増)や関西(同、1.3%増)も同様に微増していますが、アパートでは首都圏・九州ともに1.6%減、関西は2.6%減と全国的に減少傾向にあります。

さらにアパートの場合、築年数が30年以上にもなると劣化が表面化するという構造的な要因が影響する上に、空室対策として賃料の値引きだけでなく、「敷金や礼金ゼロ」物件が増加。首都圏では、敷金ゼロ物件はマンション32.4%に対してアパートは56.2%、礼金ゼロ物件はマンション46.9%に対してアパートは60.9%とその差が顕著に現れており、「今後もアパート市況は軟調な動きが続く」(池本氏)とみられます。

入居者ニーズを捉えた差別化が重要

賃貸市場の二極化に加え、最近では入居者ニーズも変化しています。同社が実施している「賃貸契約者動向調査全国版(2018年5月調べ)」によると、契約決定までの平均日数は22.5日と短くなる傾向にあり、物件の平均内見数は2017年度で2.8件と、初めて3件を下回りました。不動産店への訪問件数も1.5件と、Webによる物件探しが主流となっていることから、「Web上でしっかりと物件を見せていく必要がある」といいます。

入居後の満足度も重要なポイント。設備面では、無料インターネット接続サービスや24時間対応のゴミ置き場、遮音性の高い窓やスマートロックの導入などが上位に挙がっています。「設備のレア度に快適性が加われば満足度が高まり入居の長期化につながり、結果として他物件との差別化にもなっている」(池本氏)。

さらに顕著になっているのが入居者のリフォーム・カスタマイズ実施経験率。2017年度は19.2%と、この3年間で8.4ポイントも上昇し、その大半が壁への収納棚・フックの設置や照明の取り換えなど、「部屋の使い勝手の改善」でした(図表3)。

図表3 実施したことがあるリフォーム内容 上位10項目

池本氏は「賃貸では契約で原状回復の原則があるため、退去時に申告していないことが多いということ。せっかくの付加価値をリセットするのではなく、退去通知のときに聞いてみて使える部分は生かすなど、入居者とのコミュニケーションのとり方を見直してみてはどうか」と提案します。また、「国土交通省のDIY型賃貸借ガイドブックなどのツールを活用して、オーナー・管理会社・入居者間で知識・情報を共有すれば、安心・安全なDIYが実現できる」とのこと。「入居者との関係性を高めながらニーズをきちんと把握し差別化を図っていくことが、これからの賃貸管理業では重要になっていくだろう」と指摘しています。

池本 洋一(いけもと よういち)
(株)リクルート住まいカンパニー「SUUMO」編集長、リクルート住まい研究所所長(兼務)。メディアを通じて、住まい領域のトレンド発信を行っている。

このコラムは、全日本不動産協会が発行する月刊不動産2019年2月号に掲載された特集記事を一部改定したものです。