自ら売主制限は全部で8種類ありますが、本稿では、そのうち本年の宅建試験で出題の可能性が特に高いと予想される「事務所等以外の場所でした買受けの申込みの撤回等(クーリング・オフ)」と「手付金等の保全措置」について学習のポイントを解説します。
なお、自ら売主制限に関する問題は、例年3~4問出題されています。

宅建業者が自ら売主となる契約の場合、宅建業者ではない買主は、買受けの申込みの撤回や契約の解除をすることができるのが原則であるが、以下の場所(事務所等)で契約したときは、クーリング・オフできない。

※買受けの申込みをした場所と契約を締結した場所が異なる場合は、申込みの場所で判断する
クーリング・オフによる申込みの撤回または契約解除は、必ず書面によって行う必要があるが、その効果は、書面を発した時に生じる。クーリング・オフ制度は買主を保護するためにあるので、クーリング・オフがされた場合、業者から損害賠償等を請求することは一切できず、手付金等はすべて買主に返還しなければならない。
業者は、一定の保全措置を講じた後でなければ手付金等を受領してはならない
業者は、一定の保全措置を講じた後でなければ手付金等を受領してはならない
※手付金等とは、手付、前金、内金、中間金などの名称を問わず、「契約締結の日以後引渡前に授受される金銭で、代金に充当されるもの」をいう。なお、契約締結前に支払われた金銭(申込証拠金等)であっても、契約締結後に代金に充当する場合は、契約後に支払われる金銭に組み込まれ、保全措置の対象となることに注意。
手付金等を何回かに分けて受領する場合は、合計して保全が必要な額に達すれば、それまでに既に受領した分も含めて保全措置を講じなければならない。

下記問題は○×問題です。
【Q1】
宅地建物取引業者Aが、自ら売主として宅地建物取引業者でない買主Bとの間で宅地の売買契約を締結するに際し、Bは、Aの仮設テント張りの案内所で買受けの申込みをし、その3日後にAの事務所でクーリング・オフについて書面で告げられた上で契約を締結した。この場合、Aの事務所で契約を締結しているので、Bは、契約の解除をすることができない。(H26年 問38)
【Q2】
宅地建物取引業者A社が、自ら売主として宅地建物取引業者でない買主Bと建築工事完了前のマンション(代金3,000万円)の売買契約を締結し、Bから手付金200万円を受領した。Bが売買契約締結前に申込証拠金5万円を支払っている場合で、当該契約締結後、当該申込証拠金が代金に充当されるときは、A社は、その申込証拠金に相当する額についても保全措置を講ずる必要がある。(H23年 問38)
【A1】×
クーリング・オフの可否は、買受けの申込みの場所を基準に判断する。本問では、仮設テント張りの(土地に定着しない)案内所で申込みが行われているので、Bは、クーリング・オフできる。
【A2】○
契約締結後、申込証拠金が代金に充当されるときは、当該申込証拠金も「手付金等」に含まれ、保全措置の対象となる。
植杉 伸介
早稲田大学法学部卒業。宅建士、行政書士、マンション管理士・管理業務主任者試験等の講師として30年以上の実績がある。『マンガはじめて建物区分所有法 改訂版』(住宅新報出版)など、これまでに多くのテキストや問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。
このコラムは、全日本不動産協会が発行する月刊不動産2019年10月号に掲載された特集記事を一部改定したものです。
内閣総理大臣から「公益社団法人」として認定を受けた業界最古の全国組織である公益社団法人 全日本不動産協会埼玉県本部・公益社団法人不動産保証協会埼玉県本部は、埼玉県下全域で5つの支部がある宅建業者約1,870店舗の会員で構成する団体です。