宅建士試験合格のコツ・権利関係 ~民法(抵当権)~ | 全日本不動産協会 不動産保証協会 埼玉県本部

宅建業コラム

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宅建士試験合格のコツ・権利関係 ~民法(抵当権)~


抵当権は、ほぼ毎年出題される項目なのですが、ここ2年は連続して本試験での出題がありませんでした(令和3年の12月試験を除く)。したがって、令和4年本試験において、抵当権から出題される確率は非常に高いと思います。そこで、今回は、抵当権について、令和4年本試験に出題が予想される論点を中心に学習していきます。

1. 抵当権とは

債務者または第三者(物上保証人という)が担保に供した物(土地・建物、地上権、永小作権)を、占有を移さず設定者の使用・収益にまかせながら、債務が弁済されない場合に、債権者がその物の競売代金から優先弁済を受けることのできる約定担保物権です。

2. 抵当権の性質

(1) 付従性

抵当権がその被担保債権の運命に付き従うという性質。たとえば、被担保債権が公序良俗違反などで無効の場合、それを担保すべき抵当権も成立しません。また、被担保債権が時効消滅したり、全額弁済によって消滅すれば、抵当権も自動的に消滅します。

(2) 随伴性

債権が譲渡されれば、これに随伴して抵当権も移転するという性質。被担保債権の譲受人は同時に抵当権も取得します。

(3) 不可分性

抵当権者は、その被担保債権全額の弁済を受けるまで、目的物の全体に対して権利を行使することができるという性質。

(4) 物上代位性

目的物の売却、賃貸、滅失または損傷によって、抵当不動産の所有者が金銭などを受ける権利(売却代金、賃料、保険金など)を取得した場合、これに対しても抵当権を行使することができるという性質。物上代位権を行使するためには、金銭その他の物が払い渡される前に抵当権者が自ら差し押さえる必要があります。

3. 抵当権の効力

(1) 抵当権の効力が及ぶ範囲

抵当権は、抵当権の目的物に付加して一体となった物にも及びます。
1. 抵当不動産の構成部分となって独立性を失っているような附合物(雨戸、立木、庭石など)
2. 抵当権設定時の従物(畳、建具など)
※従物とは、独立の物でありながら主物に従属してその効用を助ける物(たとえば、かばんと鍵)
3. 借地上の建物に抵当権を設定した場合の借地権

(2) 抵当権の効力が及ばない場合

1. 土地と建物は別個独立の不動産ですから、土地に対する抵当権の効力がその土地上の建物に及ぶことはありません。
2. 抵当権の効力は、原則として天然果実(ある物から自然に産み出される経済的収益。たとえば、土地上の稲)には及びません。ただし、被担保債権について不履行があった時以降に生じた果実には、抵当権の効力が及びます。

4. 法定地上権

次の要件を満たす場合、建物所有者のために法律上当然に地上権が成立します。
法定地上権

(1)の要件について
更地に抵当権が設定された場合は、その後建物が築造されても法定地上権は成立しません。
(2)の要件について
抵当権設定当時さえ、土地と建物の所有者が同一であればよいので、抵当権設定後、土地と建物の所有者が異なってもかまいません。

5. 一括競売

更地に抵当権を設定した後、設定者自身が建物を築造したときは法定地上権は成立しません。抵当権が実行され土地が競売にかけられると、土地と建物が別所有となりますが、法定地上権が認められない以上、建物を収去せざるを得ません。そこで、このような場合に抵当権者は、土地と建物を一緒に競売できるとしました。土地・建物を同一人が競落することにより、建物収去という事態を避けようとする趣旨です。

ただし、抵当権は土地につけたものであり、建物にまでその効力は及ばないので、優先弁済を受けられるのは土地の代価についてのみです。

論点の確認と知識定着のための問題

下記問題は○×問題です。

【Q1】

Aは、A所有の甲土地にBから借り入れた3,000万円の担保として抵当権を設定した。Aが甲土地に抵当権を設定した当時、甲土地上にA所有の建物があり、当該建物をAがCに売却した後、Bの抵当権が実行されてDが甲土地を競落した場合、DはCに対して、甲土地の明渡しを求めることはできない。(H28 問4)

【Q2】

土地に抵当権が設定された後に抵当地に建物が築造されたときは、一定の場合を除き、抵当権者は土地とともに建物を競売することができるが、その優先権は土地の代価についてのみ行使することができる。(H27 問6)

問題の解答と解説

【A1】○

抵当権設定当時、建物が存在し、土地と建物の所有者が同一であり、競売の結果、土地と建物の所有者が異なるに至っており、法定地上権の要件をすべて満たしています。したがって、Dは土地の明渡しを求めることはできません。

【A2】○

更地に抵当権を設定した後、その土地上に建物を築造した場合、抵当権者は一括競売をすることができますが、優先弁済は土地の代価からしか受けられません。

植杉 伸介
宅建士・行政書士・マンション管理士、管理業務主任者試験などの講師を30年以上務める。著書に『マンガはじめて建物区分所有法 改訂版』(住宅新報出版)、『ケータイ宅建士 2021』(三省堂)などがあるほか、多くの問題集の作成に携わり、受験勉強のノウハウを提供している。

このコラムは、全日本不動産協会が発行する月刊不動産2022年4月号に掲載された特集記事を一部改定したものです。

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