空き家・空き地問題解消へ!令和5年度税制改正大綱のポイントを解説 | 全日本不動産協会 不動産保証協会 埼玉県本部

宅建業コラム

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空き家・空き地問題解消へ!令和5年度税制改正大綱のポイントを解説


令和4年12月、令和5年度税制改正大綱が公表されました。

不動産業界として特に注目すべき内容は、現在国内の喫緊の課題である空き地・空き家問題解消へ向けた2つの特例措置の拡充に関する税制改正です。

本コラムでは上記2つの税制改正に加えて、不動産業界として抑えておくべき令和5年度税制改正大綱のポイントを解説します。

令和5年度税制改正に至るまでの背景

令和5年度税制改正に至るまでの背景
日本は空き地・空き家問題が深刻化しており、全国共通の喫緊の課題となっています。

不動産業界の関連団体においても、特に空き地・空き家問題は重視すべき課題であると捉え、各方面に対する粘り強い要望活動が行われてきました。

その結果、空き地・空き家問題解消へ向けた2つの税制改正の要望が実現することとなりました。今回の税制改正により、所有者不明土地や空き家対策に資するとともに、不動産の有効活用および流通活性化につながることが期待されます。

空き地・空き家問題解消へ向けた2つの税制改正の概要

まず令和5年度税制改正大綱の中で、空き地・空き家問題解消へ向けた2つの税制改正の概要について解説します。

「低未利用地の適切な利用・管理を促進する」ための特例措置の延長・拡充

利用ニーズが低下する土地の増加に対して、適切な利用・管理の確保や更なる所有者不明土地の発生を防止するべく、個人が保有する低額な土地等を譲渡した場合、譲渡所有の特例措置が延長・拡充されます。

◆現行の特例措置:
譲渡価額が500万円以下の低額な一定の土地等を譲渡した場合、長期譲渡所得から100万円が控除されます。

今回の税制改正により、現行の特例措置が以下の通り延長・拡充されます。

  • 現行の措置を3年間延長(令和5年1月1日~令和7年12月31日)
  • 「市街化区域又は非線引き都市計画区域のうち用途地域設定区域に所在する土地」「所有者不明土地対策計画を策定した自治体の都市計画区域内に所在する土地」に該当する土地は、譲渡価額の要件につき上限800万円に引き上げ
  • 対象適用となる土地等の譲渡後の利用要件に係る用途からコインパーキングを除外

「空き家の発生を抑制する」ための特例措置の延長・拡充

空き家が放置され、周囲の生活環境への悪影響を防止し、相続に由来する古い空き家の有効活用を促進するために、空き家売却に係る特別措置が延長・拡充されます。

◆現行の特例措置:
相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までに、被相続人が居住していた家屋を相続した相続人は、該当家屋又は除去後の土地を譲渡した場合、譲渡所得から3,000万円を控除されます。

今回の税制改正により、現行の特例措置が以下の通り延長・拡充されます。

  • 現行の特別措置を4年間延長(令和6年1月1日~令和9年12月31日)
  • 売買契約等に基づき、買主が譲渡日の属する年の翌2月15日までに耐震改修又は除去の工事を行った場合、工事の実施が譲渡後であっても適用対象とする
  • 相続人が3人以上である場合、特別控除額を2,000万円とする
  • その他所要の措置

不動産業界としておさえておくべき税制改正大綱4つのポイント

次に不動産業界として抑えておくべき税制改正大綱のポイントについて解説します。
不動産業界としておさえておくべき税制改正大綱4つのポイント

土地の所有権移転登記に係る登録免許税の軽減措置の延長

土地の所有権を売買で移転する場合、通常2%係る登録免許税が1.5%となります。また、現行の措置が令和8年3月31日までの3年間延長となります。

既存住宅の買取再販に係る不動産取得税の特例措置の延長

買取再販で扱われる住宅・敷地のうち、一定の質の向上を目的としたリフォームを行った後、個人の居住用住宅として譲渡するものに対して不動産所得税が一定額減額されます。また、現行の措置が令和7年3月31日までの2年間延長となります。

長期保有土地等に係る事業用資産の買換え等の場合の課税の特例措置の延長

10年超保有する事業用資産を譲渡し、新たに事業用資産を取得した場合、譲渡した事業用資産の譲渡益に対して、原則80%の課税繰り延べが認められます。また、現行の措置が3年間(令和5年4月1日~令和8年3月31日)延長となります。

不動産関連税制で適用期限が延長される主な項目

その他、主に4項目の不動産関連税制で適用期限が延長されます。

  • 災害ハザードエリアからの移転促進のための特例措置
    登録免許税が令和8年3月31日までの3年間、不動産取得税が令和7年3月31日までの2年間延長
  • 地域福利増進事業に係る固定資産税の特例措置
    固定資産税等が令和7年3月31日までの2年間延長
  • 法人及び個人の不動産業者等に係る土地譲渡益重課の適用停止措置
    適用除外措置を一部見直しのうえ、令和8年3月31日までの3年間延長
  • 優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例
    対象事業を一部見直しのうえ、令和7年12月31日までの3年間延長

NISAに関する税制改正も影響が大きい

令和5年度税制改正大綱のNISAに関する税制改正もまた、不動産業界に大きな影響を与える項目と言えるでしょう。

令和6年1月よりNISA制度が抜本的拡充・恒久化されます。これにより、NISA非課税枠が拡張され、これまで預貯金口座に留まっていた資金の一部がREIT市場(不動産投資市場)への流入が期待できます。こうした「貯蓄から投資へ」のパラダイムシフトが、不動産業界に好影響を与えるでしょう。

今後への期待

令和5年度の税制改正では「低未利用地の適切な利用・管理」や「空き家の発生を抑制するための特例措置」など、一定の制限が加わりつつも、それぞれ延長・拡充されました。併せて「NISAの抜本的拡充・恒久化」も講じられています。

これらの措置は空き家や所有者不明土地問題の解消へ大いに資するものであり、さらには不動産の有効活用を促し、流通活性化に繋がることが期待されます。

公益社団法人全日本不動産協会 埼玉県本部 公益社団法人不動産保証協会 埼玉県本部

内閣総理大臣から「公益社団法人」として認定を受けた業界最古の全国組織である公益社団法人 全日本不動産協会埼玉県本部・公益社団法人不動産保証協会埼玉県本部は、埼玉県下全域で5つの支部がある宅建業者約1,870店舗の会員で構成する団体です。

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