宅建業コラム

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VRサービスの現状と今後・不動産業界との関連性

更新日:2018年05月31日

近年、「VR」という言葉を耳にするようになりました。ゲームや映画、テレビなどのメディアで使われている技術で、ここ数年の間で製造現場や医療分野、そして不動産業界にも取り入れられることが増えてきています。一体どんな技術で、今後どのように広がっていくのでしょうか?(取材協力:株式会社エージェンテック)

VRサービスの現状と今後の行方

VR=仮想現実とは?

VR(VirtualReality)とは、「仮想現実」と訳されていて、コンピューターなどを使って人工的な環境を作り、あたかもそこにいるような感覚を体験することができる技術です。「ヘッドマウントディスプレイ」と呼ばれるゴーグルのような機器を頭に装着すると、360度で撮影されたパノラマ映像を見ることができることから、映し出される世界に浸る・ハマるという「没入感」が大きな魅力となっています。

VRが導入されている分野としては、シミュレーションゲームやアニメーション、テレビ、映画など、エンターテインメント業界が先行しています。消費者向けサービスとして、ゲームなら家庭で、映像であれば映画館や体験型施設に行けば、リアルな映像を楽しむことができるようになりました。

ヘッドマウントディスプレイを着けてVR体験(イメージ)

ヘッドマウントディスプレイを着けてVR体験(イメージ)

2016年はVR元年

VRは1980年代から技術開発が進められてきましたが、2016年に各社から相次いでVRヘッドマウントディスプレイが発売され、VRを使った新たな商用サービスが出始めたことから、2016年は「VR元年」といわれています。
近年においては、ヘッドマウントディスプレイや360度撮影できるカメラといった関連機器の普及価格帯品が登場したことで、身近なサービスとして体験・利用できるようになりました。

360度カメラ

360度カメラ

現在登場している商用サービスとしては、医療向けの手術演習システムや、小売業向けの空間体験システム、観光施設の紹介や観光パンフレット、教育現場における体験学習プログラム、作業訓練や安全教育といった企業・店舗研修プログラムなどがあり、さまざまな業種や分野で利用が進んでいます。

VRサービスが始まった当初から、「不動産とVRは親和性が高い」といわれてきました。最もわかりやすい例は、現地に行かずに、店舗にいながら見たい物件の中を見学することができるVR内覧サービスです。
このサービスを使えば、複数の物件を比較できるため物件の絞り込みが楽になる上、不動産会社の担当者にとっても移動時間の短縮や鍵の受け渡しの手間も省けることで、接客の効率化につながります。
特に引っ越し先が遠方の場合は、何度も現地へ物件を見に行くことが難しいため、VRを使った内覧サービスはお客様に喜ばれているサービスの1つになっています。

さまざまなVRサービスを提供している(株)エージェンテックでは、360度のパノラマ画像を見られる「Smart360」というサービスを展開。「見る人の興味に合わせて閲覧したい部屋に移動し、気になった箇所をクリックすると室内設備や内装等の詳しいテキストや写真が表示されるので、(クライアントである不動産会社の)ホームページの閲覧数や問い合わせが増えたそうです」と話す金淙採社長。
また、最近では空室対策や中古住宅を売るときに行われる、家具・小物でインテリアの演出を行う「ホームステージング」をVRで行う会社も登場しています。

「Smart360」で制作された物件紹介のVR画像

「Smart360」で制作された物件紹介のVR画像

企業向けサービスの充実が普及のカギ

このように、今後もVR市場は大きく拡大していくと見込まれていて、米国の投資銀行・ゴールドマンサックス投資調査部は、2025年には世界で950億ドル(AR・VR合計、1ドル=100円換算で9.5兆円)になると予測しています。用途としても、現在中心となっているゲームやライブイベント、映像関連などエンターテインメント分野で、全体の5割以上を占めることになるようです。

では日本ではどのように広がっていくのでしょうか?
金社長は「日本でもゲームを中心としたエンターテインメント市場が拡大していくと思いますが、ビジネス領域への普及があればもっと拡大する可能性があります」と言います。
これまでのVRサービスは“空間を楽しむ・移動する”ことが中心でしたが、ビジネス分野で活用するには“伝える”機能が重要とのこと。
VRの画面上に動画や文字情報などを加えることで、相手がほしい情報をストレスなく感覚的に提供することができるようになり、さらにVRサービスの利用状況を分析すれば、営業活動や市場調査にも役立てることができるといいます。

ホテルやショールームといった商業施設や不動産会社などの営業ツールとして、また建設現場の高所作業や自動車の安全運転、飲食店の調理などの研修プログラム、保守・点検業務を行うメンテナンス分野など、「空間を使う、提供する領域でのVRサービスのニーズは今後さらに高まっていく」(金社長)と予想されています。

このコラムは、全日本不動産協会が発行する月刊不動産2018年4月号に掲載された特集記事を一部改定したものです。